JFEテクノリサーチ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役:花澤 和浩)は、「電池用スラリーのレオ・インピーダンス測定サービス」の提供を始める。リチウムイオン電池(LIB)などの電池用スラリーにせん断を加えながら、動的粘弾性などのレオロジー特性と交流インピーダンスを同時に測定するサービスだ。液系LIBと硫化物系全固体電池の双方で、高品質な電極づくりと次世代電池の開発を支援する。

塗工中に変わるスラリーの内部構造を捉える
カーボンニュートラルに向けて自動車の電動化や再生可能エネルギーの導入が進むなか、LIBや全固体電池には高性能化、品質の安定化、生産性の向上が急務となっている。電池の正極・負極は、活物質、導電助剤、バインダーなどを溶媒に分散させたスラリーを集電箔に塗工し、乾燥・圧縮して作られる。電池性能を安定させるうえでは、電極内に活物質や導電助剤が適切に分散し、良好な導電ネットワークが形成された高品質な電極をいかに作れるかが極めて重要になる。電極をうまく塗工できるかどうかが、電極の性能向上や品質安定化、ひいては電池の性能や品質を左右する。
ただし、スラリーの内部構造は塗工時に加わるせん断によって刻々と変化する。従来の粘度・粘弾性測定では、流動特性や力学的な応答は把握できても、せん断に伴う導電ネットワークの変化、つまり電気的特性の変化を同時に捉えることは難しかった。そのため、塗工時のせん断によって力学特性と電気特性がどのように連動して変化するのかを評価し、材料選定や製造条件の最適化につなげる手法が求められていた。

サービスの3つの特長
実工程を模した力学と電気の同時測定
このサービスでは、回転または振動によるせん断をスラリーに加えながら、粘度、貯蔵弾性率、損失弾性率などのレオロジー特性と交流インピーダンスを同時に測定する。せん断に伴う力学的な応答と電気的な変化を直接結びつけることで、スラリー中の粒子間ネットワークの形成・解砕や分散状態の変化を多面的に推測・評価できる。材料選定や配合の改良、混練・分散条件の検討、実際の塗工工程を想定した条件評価、品質安定化に向けたデータ取得など、顧客の開発・製造における条件検討の効率化を後押しする。
大気非暴露環境で硫化物系全固体電池スラリーにも対応
窒素雰囲気下、露点-60℃の大気非暴露環境で測定できる。水分との接触を避ける必要がある硫化物系全固体電池用スラリーについても、特性や安全性を確認したうえで評価を検討できる。全固体電池の実用化に向け、電池メーカー、自動車メーカー、電池材料メーカー、製造装置メーカーの材料開発、電極設計、生産技術開発、品質安定化を支援する。
材料選定からセル性能評価まで一貫して支援
レオ・インピーダンス測定に、電池用スラリーの試作、電子顕微鏡観察、ラマン分光分析、塗工膜構造解析、電極・セル性能評価などを組み合わせた総合的なソリューションとして提案する。長年にわたり試作・評価・解析の技術でLIBの研究開発を支えてきた同社が、課題の根幹にある原因の究明や条件の絞り込みをトータルで支援する。
評価仕様と測定事例
主な評価仕様(対応可能範囲)は以下の通り。
- 対象試料:液系LIB用スラリー、硫化物系全固体電池用スラリー
- せん断条件:トルク範囲 5 nNm~200 mNm、角速度範囲 0~314 rad/s、角周波数範囲 10⁻⁷~628 rad/s
- 温度範囲:-20~+200℃
- 雰囲気:大気、窒素雰囲気下、大気非暴露環境(窒素雰囲気下、露点-60℃)
なお、実施できる測定条件と範囲は、対象試料の組成、溶媒、固形分濃度、揮発性、腐食性、安全性、測定治具との適合性によって異なる。測定事例としては、液系LIB用スラリーにせん断ひずみを与えながら交流インピーダンスを測定し、各ひずみ条件でのレオロジー特性と交流インピーダンスの相関を評価した。この試料では、1%以上のひずみを加えた条件で、損失弾性率が貯蔵弾性率を上回る力学的挙動と、インピーダンス値の増加という電気的変化が確認され、せん断によって粒子間ネットワークが解砕された可能性が示唆された。
材料から電池性能まで一貫評価へ
同社は今後、実際の混練・搬送・塗工工程をより具体的に模した測定条件の拡充と、得られたデータの定量解析を進める。さらに、大気非暴露下での材料分析や塗工膜の構造解析などの各種分析とセル性能評価を連携させ、材料・配合から電池性能までを一貫して評価できるサービスへと発展させながら、次世代電池の実用化と製造業の競争力向上に貢献していくとしている。
出典:JFE-TEC