一般社団法人ことばサポートネットは、子どもの発音を確認するための絵本『かきくけこっぷちゃん』の完成を報告しました。言語聴覚士が作成したもので、同法人がウェブサイトで無償公開している『5歳児の発音チェックシート』をベースにしています。このチェックシートは、自治体の5歳児健診などで活用されています。絵本は、「復唱だけでなく、絵を見ながら楽しく発音を確認できる選択肢がほしい」という声から生まれました。

5歳児健診の現場に広がる「発音評価」の迷い
全国の自治体では、近年「5歳児健診」の導入が進んでいます。問診項目には「発音の明瞭さ」が含まれています。ただ現場では、5歳児の発音に心配事があるかどうかを見極める基準や、具体的な対応方法についての情報が不足しています。医療・療育・保育の現場からは、「対応に迷う」という声が多く寄せられていました。
同法人は、子どもの構音障害や粘膜下口蓋裂など、専門機関の受診が必要な病気の見落としを防ぎたいと考えてきました。必要な場合には、子どもや保護者がつらい思いをしないよう、適切な時期に言語聴覚士(ST)などの専門支援へつなげる体制づくりに寄与することも目指しています。こうした想いから開発したのが、5歳児発音チェックシートです。構音障害とは、年齢的には発音できるはずの音を、口唇・舌・口蓋などの発語器官やその動かし方の問題のために、はっきりと発音できない状態を指します。言語発達の遅れや発達障害の有無に関わらず現れます。粘膜下口蓋裂は口蓋裂の一種の先天性の病気です。口の中の天井(口蓋)の表面の粘膜はつながっているため、一見するとわかりにくいものの、粘膜の下にある筋肉や骨の癒合に異常があります。
一方で、ことばの相談に応じられる言語聴覚士は不足しています。相談の機会を確保するため、多数の言語聴覚士がオンラインで相談業務を行っています。そこで同法人は、対面とオンラインのどちらでも使え、単純な復唱が苦手な子どもでも必要な評価を受けやすくなる素材として、この絵本を制作しました。絵本はオンラインでのことばの相談事業で使うことを前提に作られており、制作にあたっては洲崎福祉財団の助成を受けています。

絵本『かきくけこっぷちゃん』の主な特徴
読み聞かせの中で6つの基本の発音を確認
大人が絵を見せながら文字を読み、子どもにそれを真似してもらいます。無理なくできるところまで一緒に読み進める中で、6つの基本の発音をチェックできる仕組みです。巻末には「発音チェックシート」を収録しており、該当する項目をチェックすると対応の目安が得られます。絵探しが好きな子どもが楽しみながら発音を確認できる、おまけの絵探しページも付いています。
職種を問わず使える解説、オンラインにも対応
チェックシートの対応目安の理由がわかりやすいように、「子どもの発音の知識」として、年齢に応じた発音の育ちの目安や構音障害に関する専門的な知識も収録しました。言語聴覚士に限らず、保健師、園の先生、学校の先生、子育て支援センターの先生、療育機関の先生など、子どもの育ちに関わる人であれば誰でも活用しやすい仕様です。また、海外在住でことばの相談先につながりにくい人の保護者による確認などにも活用できます。
5歳児健診などでのオンライン専門家相談や、言語聴覚士によるオンライン言語療法などでも、公衆放映権などを心配せずに利用できます。オンラインでも提示しやすい大きさと文字配置になっています。医療機関、保健センター、園、学校など対面の場でも利用できます。
書籍の概要と関連する取り組み
- 書名:かきくけこっぷちゃん: 〜子どものための発音チェック絵本〜
- 価格:ペーパーバック1,210円、電子書籍版330円
- 仕様:A4スクエアサイズ(210×210mm)/全26ページ
- 発売日:2026年9月10日
- 販売場所:Amazon限定(Kindle Unlimited対象)
本書の売上は、子どもの構音障害の啓発活動と、見過ごされる子どもを減らすための事業に役立てられます。
絵本のもとになった『5歳児の発音チェックシート』のデータと、チェックシートの解説の理解を深める資料「5歳児の発音評価ガイドブック」は、同法人のウェブサイトで無償公開されており、誰でもダウンロードできます。ガイドブックを手元に置いて使いたい人向けには、同じ内容の書籍『5歳児の発音評価ガイドブック/発音チェックシート付き』もAmazonで販売されています。これらの書籍の売上は、相談先につながりにくい人に向けた「オンライン無料ことば相談」の運営に活用されています。
ことばサポートネットは、ことばや発音に悩む人に言語聴覚士がいつでも寄り添える体制づくりを進めている団体です。オンラインを中心に、ことばの悩みや困りごとに関する個別相談や発音練習を行っています。また、子育て関連施設、教育機関、医療機関などでの言語聴覚士による支援の提供や、保護者・専門職を対象とした相談会や講座の開催にも取り組んでいます。