特定非営利活動法人日本科学振興協会(JAAS、代表理事:田中 智之 京都薬科大学/永野 博 政策研究大学院大学 政策研究センター)は10月25日(日)、Tokyo Innovation Baseで「学生アイデアファクトリー2026」のファイナルプレゼンテーションを開きました。この場で、本年度から新設された文部科学大臣賞、各分野の有識者で構成する審査委員会が選ぶJAAS賞、協賛企業が選ぶDIAMOND賞・GOLD賞の受賞者が決まりました。自主研究に取り組む学生の研究アイデアを発掘・支援するこのプロジェクトは2023年に始まり、今年で4年目です。今回は全国から選抜された28名の学生が集まり、自らの興味や問題意識から生まれた自主研究アイデアを披露しました。

ソフトロボットからPhysical AIまで、受賞アイデアの顔ぶれ
主な受賞者と受賞アイデアは次のとおりです。
- 文部科学大臣賞:平松 立光さん(九州大学 農学部)「自律遊走ソフトロボット開発のための狭隙通過モデルの実証」
- JAAS賞:澤近 大地さん(東京大学 教養学部理科I類)「甲殻類型ロボットの歩行制御」
- DIAMOND賞:片倉 宏海さん(東京大学 工学部 機械情報工学科)「監督条件に応じたVLAの行動学習による、Physical AIの自律性と人間の監督権の両立」
ファイナルプレゼンテーションでは、ファイナリスト8名が登壇したほか、参加者全員がそれぞれの研究アイデアを発表しました。審査ではアイデアの創造性・独自性、科学技術の振興への寄与度、プレゼンテーション力、発表から伝わる熱意などが総合的に評価され、10名の審査委員の協議によって受賞者が決まりました。また例年どおり、選抜された参加者全員に、内閣府から本プロジェクトへの挑戦を称える参加証が贈られています。

受賞者が振り返る「伝える力」の手応え
文部科学大臣賞の平松さんは、新設の賞を受けた喜びを語ったうえで、大学で生体分子を学ぶ中で生まれた発想を出発点に、応用可能性も視野に入れながら自分ならではの研究として形にできたと振り返りました。研究やアイデアをわかりやすく伝える力が大きく伸びたと実感しているといい、研究に熱心な学生が集まる環境で互いに刺激し合えたことを「大きな財産」と表現しています。
JAAS賞の澤近さんは、大好きなカニを題材にしたアイデアが評価されたことが今後の励みになったとコメントしました。高校生の頃から温めてきたアイデアが、サマーキャンプやアクセラレーションプログラムで学部外の視点を得てさらに発展したと感じているそうです。これまではアカデミアの場で挑戦してきたものの、今回の参加を通じて自分の研究の強みに気づけたことを貴重な経験に挙げています。
DIAMOND賞の片倉さんは、社会的に認知されるべきテーマとして取り組んだ研究が評価されたことを喜びました。もともとAI領域に関心があり、学部生として何ができるかを考えながら既存研究を幅広く調べ、新たなアイデアを生み出したといいます。発表には自信があったものの、多くの人にわかりやすく伝える表現を改めて考える機会になったとし、今後もさまざまな分野の研究に触れながらアイデアを発展させたい考えです。

審査委員長と産業界からのメッセージ
審査委員長を務めた立教大学副総長の箕浦 真生氏は、今年は審査が拮抗し、研究アイデアのレベルの高さを強く感じたと総評しました。文部科学大臣賞の新設などでイベントが広がりを見せるなか、過去の参加者も巻き込みながら学生の探究心と挑戦を応援できていることへの喜びを示し、将来は次世代の研究仲間を支える存在として活躍してほしいと期待を寄せています。協賛企業の東京エレクトロン株式会社からは、サステナビリティ グローバルヘッドの荻野 裕史氏がコメントを寄せました。異分野の仲間との対話で自らの研究を学際的な視点から深められることや、将来にわたって交流できる多分野の人的ネットワークを築けることをこの取り組みの魅力に挙げ、既成概念にとらわれない自由な発想と挑戦を続けることが科学技術やイノベーションの創出において極めて重要だと述べています。

条件は「教員の指導下ではない独自のアイデア」
学生アイデアファクトリーは、「日本の科学を、もっと元気に。」を合言葉に活動するJAASが、学部生・高専生・短大生の科学への夢や自由な発想、独創的な研究アイデアの発掘・支援を目的に2023年から実施しています(2023年度は30名、2024年度は35名が採択)。応募の条件は、大学の研究室で教員などの指導のもと進めている研究ではなく、独自に温めてきたアイデアであること。選抜された学生は研究合宿「サマーキャンプ」や、アイデアを具体的な研究計画に落とし込む「アクセラレーションプログラム」を経て、公開のファイナルプレゼンテーションに臨みます。各分野(産官学民)の専門家との出会いや、全国の同期・先輩・後輩とのネットワーク形成も特徴です。受賞アイデアは学生アイデアファクトリーのホームページで公開されています。
過去の参加者は、プログラム終了後も学生向けハッカソンや学会発表などに挑戦しています。2023年参加の佐藤愛海さんはクラゲを活用したクラフトビールの開発に取り組み、起業家として各種メディアで注目を集めています。2024年参加の太田雅啓さんは、人とコンピュータの新たな関わり方をテーマとした国際会議「TEI2026」で、優れた研究発表に贈られるSpecial Recognition Award(Runner-up)を受賞しました。プロジェクトは内閣府、総務省、文部科学省、経済産業省、国立研究開発法人科学技術振興機構が後援し、東京エレクトロン株式会社、株式会社荏原製作所、花王株式会社、CKD株式会社などが協賛しています。