株式会社パワーエックス(取締役兼代表執行役社長CEO:伊藤 正裕)と関西電力送配電株式会社(代表取締役社長:白銀 隆之、以下「関西送配電」)は、蓄電池を活用した新たな系統接続・設備形成手法について、実証に向けた検討を進めるための基本合意書を締結しました。両社が目指すのは、新たな電力需要や再生可能エネルギー等の電源の早期接続です。従来の送配電設備の増強に加え、蓄電池の充放電で既存設備を有効活用することで、系統接続までの期間短縮と設備投資の合理化の両立を図ります。
系統の空き容量不足という課題
近年、データセンターの新設などに伴う電力需要の増加や、再生可能エネルギーの導入拡大を背景に、系統接続のニーズが高まっています。ただし系統の空き容量が足りない場合は、一般的に系統設備の増強が必要になり、接続までに長い期間がかかることがあります。
そこで両社は、送配電設備の増強だけに頼らない新たな選択肢を検討します。蓄電池事業者が所有・運営する蓄電池を、一般送配電事業者との契約に基づいて、系統接続や設備形成に活用する手法です。
混雑する時間帯に蓄電池で電力の流れを調整
仕組みはこうです。送配電設備を流れる電力が設備容量の上限に近づくなど、系統の混雑が見込まれる時間帯に、一般送配電事業者があらかじめ定めた条件に基づいて、蓄電池事業者が蓄電池を充放電し、送配電設備を流れる電力を調整します。系統混雑を緩和することで、新たな需要や電源の早期接続、送配電設備の増強の回避・繰延べにつながる可能性があります。
両社が示したイメージは次のとおりです。設備容量100の送配電設備で、既存の電力需要100に新たな需要20が加わると、設備容量を超えるため、通常は設備増強が必要になります。このとき需要が増える時間帯に蓄電池から20を放電すれば、送配電設備を流れる電力を100に抑えられ、設備増強を回避・繰延べできる可能性があります。
大阪北部エリアの変電所で2027年度の実証開始を予定
実証では、大阪北部エリアにある関西送配電の変電所構内に、パワーエックスの系統用蓄電池(想定出力・容量:約2,000kW・8,000kWh)を設置し、系統混雑を想定した充放電運用を行う予定です。この容量は、一般家庭の月間電力使用量を260kWh(30日間)で換算すると、約920世帯の1日分の電力使用量に相当します。なお、実際に供給可能な電力量や時間は、蓄電池の運用条件などによって異なります。実証開始は2027年度を予定しており、実証場所、設備仕様、実証期間などの詳細は今後の検討を通じて決定します。
両社が今後検討する主な内容は次のとおりです。
- 系統混雑の緩和に必要な充放電条件・運用方法および契約条件
- 実証に必要となる蓄電池設備、制御・通信等の設備・システム要件
- 蓄電池の運用の確実性や、設備増強に代わる手法としての適用可能性を確認するための実証・評価方法
- 実証の実施に向けた役割分担、実施体制、スケジュール等の具体化
将来的には、配電用変電所の変圧器を対象に、設備増強の回避・繰延べにつながる可能性があります。この変圧器の増設には、一般的に1台あたり1億円から数億円程度の費用と、設計から竣工までに2〜3年以上を要するため、設備投資の合理化や、新たな需要・電源の早期接続が期待されています。
パワーエックスが描く蓄電システムの新たな活用モデル
蓄電システム(BESS)はこれまで、主に電力市場での取引や需給調整を通じて価値を提供してきました。パワーエックスは、BESSには充放電によって特定の場所・時間帯に系統を流れる電力を調整する機能もあると説明しています。送配電設備の利用が容量の上限に近づくのは、年間を通じて常時ではなく、特定の季節・時間帯に集中する傾向があります。同社は、こうした時間帯を見通した計画的な運用により、BESSが系統に直接貢献できると考えています。
同社の狙いは、変電所へのBESS設置そのものではありません。系統混雑の緩和に貢献することで、系統増強のみに依らずにBESSの導入を拡大していく新たな活用モデルの確立にあります。実証では、一般送配電事業者があらかじめ定める条件を満たしつつ、それ以外の時間帯には電力市場での運用とも両立させ、送配電設備の容量の範囲内でBESSを系統に接続・運用できるかを、実際の設備を用いて検証します。
この手法の実現には、指定された時間帯・量に対してBESSが確実に充放電できることが不可欠です。パワーエックスはBESSの開発・製造に加え、電力市場での運用・制御までを一貫して手がけており、メーカーとして自ら運用を担う立場から、充放電の確実性をハードウェアと制御の両面から検証するとしています。同社は、実証で得られる知見はBESSに携わる他の事業者にとっても共通の土台になると考えており、この活用モデルが他の電力エリアでも、一般送配電事業者との協調のもとで広く活用されるよう取り組む方針です。
出典:パワーエックス