医療・福祉

医療機関の56.8%が医師同意書を「記載不可」と回答 訪問鍼灸マッサージの関係団体が厚労大臣に陳情書

医療機関の56.8%が医師同意書を「記載不可」と回答 訪問鍼灸マッサージの関係団体が厚労大臣に陳情書
宮﨑政久衆議院議員
宮﨑政久衆議院議員

衆議院議員会館で第7回「訪問治療で国民を守る会」を開催

日本医療介護保険協会(会長兼理事長:林秀一)と一般社団法人日本介護事業連合会(会長:愛知治郎)は、2026年10月28日(水)、東京・永田町の衆議院議員会館で第7回「訪問治療で国民を守る会」を共催しました。会場には宮﨑政久衆議院議員(元厚生労働副大臣)と大串正樹衆議院議員(元衆議院厚生労働委員長)のほか、厚生労働省の担当官や複数の国会議員秘書らが集まりました。

会では、高齢患者への訪問鍼灸マッサージの臨床成果として5つの症例が発表されました。あわせて、医師同意書の一律発行拒否や、視覚障がいのある国家資格者を雇用することで生じる構造的な赤字など、現場が抱える課題も報告されています。両団体は同日、上野賢一郎厚生労働大臣宛てに制度改善を求める陳情書を正式に提出し、2026年11月25日までに文書で回答するよう求めました。

症例として取り上げられたのは、手首の骨折後、関節リウマチ、変形性膝関節症、ばね指、頚椎症性脊髄症の5つです。手首の骨折後の81歳女性は、鍼灸・施灸と運動療法の併用により、疼痛評価(NRS)が8から2に、握力が10kgから18kgに改善し、自立した立ち上がりと「ひ孫の抱っこ」ができるようになりました。関節リウマチの89歳女性は、全身調整と運動療法の継続により、NRSが9から2に、10メートル歩行時間が25秒から16秒に、日常生活の自立度を示すBarthel Indexが60点から85点に向上しています。頚椎症性脊髄症の90代男性は、2022年の初回介入時には寝たきりで余命宣告を受けていましたが、週4回のリハビリ・鍼灸を経て、歩行器を使った屋外散歩ができるまでに回復したと報告されました。なお、これらは個々の臨床経過を示す症例報告であり、鍼灸マッサージ単独の効果を保証・証明するものではなく、多職種連携や運動療法の併用を含めた総合的な生活機能の維持・回復の重要性を示すものとして発表されています。

大串正樹衆議院議員
大串正樹衆議院議員

同意書「記載不可」は5,011医療機関中2,844件

健康保険で鍼灸マッサージの療養費を受け取るには、医師の同意書が欠かせません。ところが現場では、患者の病状や必要性が十分に検討されないまま、発行を一律に断られるケースが多発しているといいます。特定非営利活動法人厚生労働普及推進協会が5,011の医療機関を対象に実施した電話調査では、回答は次のように分かれました。

  • 記載不可:2,844件(56.8%)
  • 状況によって記載可能:1,444件(28.8%)
  • 記載可能:723件(14.4%)

両団体は、半数以上の医療機関が診察前から一律に記載を拒んでいる現状について、患者が必要な施術を受ける機会(受療権)を不当に奪うものだと訴えています。そのうえで厚生労働省に対し、医師による医学的判断を尊重しつつ一律の発行拒否を行わないよう医師会・医療機関へ明確に通知することと、医師向けリーフレットの是正を強く求めました。

医療機関の56.8%が医師同意書を「記載不可」と回答 訪問鍼灸マッサージの関係団体が厚労大臣に陳情書

保険者の厳しすぎる引き締め運用に危機感

協議の場では、一部の保険者(健康保険組合・協会けんぽ等)が療養費を厳しく引き締めすぎている運用について、その場での動議として強い危機感が共有されました。公的保険財政の適正な管理は重要である一方で、療養費の支出削減そのものが目的化し、「患者にとって医療上必要な施術なのか」という本質的な視点が欠落しているケースが現場から報告されています。参加者からは、保険者の経費削減を優先して医学的に必要な施術まで一律に抑制されることがあってはならないとして、患者の生活の質(QOL)を重視した適正な制度運用を求める声が相次ぎました。

医療機関の56.8%が医師同意書を「記載不可」と回答 訪問鍼灸マッサージの関係団体が厚労大臣に陳情書

視覚障がいのある施術者の訪問は「月10万円の赤字」

あん摩マッサージ指圧師の22.9%、はり師の13.1%、きゅう師の12.8%は視覚障がい者が占めており、これらの国家資格は視覚障がい者の自立を支える重要な生業となっています。一方で、訪問施術には移動や安全確保のための「補助員」が欠かせず、治療院が視覚障がい者を雇用すると人件費の負担が重くなります。訪問施術者1名あたりの月間収支モデルは次の通りです。

  • 月間保険請求額(売上):約60万円
  • 施術者・補助員の人件費:約50万円(施術者約25万円+補助員約25万円)
  • 社会保険料・車両費等経費:約20万円
  • 月間収支:▲10万円の赤字

国の就労支援に係る特別事業などの制度はあるものの、市区町村の任意事業のため、2026年3月31日時点で全国1,788自治体のうち利用実績があるのは85自治体(4.8%)にとどまり、利用者は全国で364人(1自治体あたり0.2人、他障害種含む)です。自治体に相談しても「1社のみの要望では予算化できない」「近隣自治体の様子を見る」といった理由で進まない事例が続いているといいます。両団体は国に対し、自治体への予算化の強力な働きかけ、国庫補助率の引き上げ、地域格差の是正を求めました。

日本医療介護保険協会の林秀一会長兼理事長は、訪問施術は痛みを和らげるだけでなく、歩く、食事をする、家族と触れ合うという人間らしい暮らしを取り戻す力を持っていると述べたうえで、自立を目指して国家試験を突破した視覚障がい者が、移動補助の制度不備によって働く機会を奪われている現実は放置できないとコメントしています。両団体は2026年11月25日を期限に陳情書への回答を求めるとともに、国会議員団や関係行政機関との連携を強め、医師同意書の円滑な発行手続きの確立、療養費運用の適正化、視覚障がい者就労支援制度の全国的な予算確保に向けた活動を続けていくとしています。

出典:株式会社からだ元気治療院

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