医療用漢方内服錠剤の製造で国内トップシェアを持つ大峰堂薬品工業株式会社(本社:奈良県大和高田市、代表取締役社長:辻将央)は、奈良県五條市で建設を進めてきた新工場「奈良新幸場(ならしんこうじょう)」の竣工を受けて、2026年10月5日に落成式を執り行った。名称の「幸場」には、働く人や地域にとって幸せを生み出す場所にしたいという思いが込められている。
奈良新幸場は、総工費約150億円を投じたIoT対応型のスマートファクトリーだ。同社は、生薬からのエキス抽出から錠剤の製造、検査、包装までを一貫して手がけている。新工場はこの生産体制をさらに強化し、漢方薬の品質向上と安定供給を担う新たな生産拠点となる。製品の供給開始は2027年7月を予定している。

予防・健康づくりの時代に、漢方薬を安定して届けるための拠点
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2050年には日本の人口の37.1%を65歳以上が占める見通しだ。また、厚生労働省「令和5(2023)年度国民医療費の概況」によれば、年間の医療費は48兆円を超えている。同社は、漢方薬の強みである「未病を治す」「多剤併用の削減」という点が国の医療政策と完全に合致しているとしている。そのうえで、漢方薬には日本が抱える人口動態と財政の構造的課題を解決する役割が期待されていると位置付けている。
同社は漢方薬のOEMメーカーで、2021年度IQVIAデータによると、医療用漢方内服錠剤の製造で75%の国内トップシェアを占める。売上高は2022年度の76億円から2025年度の112億円へと、3年間で約1.5倍に拡大した。こうした需要の拡大と国の期待に応えながら、品質の向上と安定供給を両立させることが新工場建設の目的だ。

一貫生産体制と「熟練の技のデータ化」が柱
新工場では、生薬からエキスを抽出する工程から、錠剤の製造、検査、包装までを一貫して行う生産体制を構築した。これにより生産能力を拡大し、漢方薬の安定供給につなげる。なかでも、錠剤の表面を被膜で覆うコーティング工程には、サイズ・生産規模ともに国内最大級の設備を導入している。
もう一つの特長は、製造工程のデータを収集・解析する仕組みだ。これまで熟練者の経験や感覚に基づいて培われてきた製造ノウハウを、データとして蓄積・共有していく。蓄積したデータは製造条件の最適化や工程の改善に活用し、経験だけに頼らずに高い品質を安定して再現できる仕組みづくりを進める。あわせて、生産性の向上や製造コストの低減にもつなげていく考えだ。

地域産業クラスターの中核企業として、奈良から世界へ
同社は、経済産業省・内閣府による奈良県地域産業クラスター計画の中核企業に位置付けられている。2026年9月には、医薬品等製造分野における地域産業クラスター計画の中核企業となった。奈良新幸場の建設にあたっては、国および奈良県から補助金の交付を受けている。新工場の稼働を通じて、雇用の創出や人材の育成、県内の取引先と連携したサプライチェーンの強化に取り組み、奈良県の製薬産業の発展に貢献していくとしている。
海外では、2018年にドイツで漢方薬の製造許可を取得し、2019年には現地で「YamatoGast」の販売を始めた。今後もドイツで培った経験を生かして、海外市場への展開を進める方針だ。

「品質はお客様に対する誠意」――辻社長が語る新工場の意義
辻将央社長は、「漢方薬は天然物を原料としているため、どうしても揺らぎがあります。それを医薬品として一定の品質に整えるのは、とても難しいことです」と語る。そのうえで、この課題に正面から取り組むためのスマートファクトリーがようやく完成したと述べた。さらに「大切なのは、何を導入したかではなく、導入した設備によって皆さまにどのような価値をお届けできるかです。品質はお客様に対する誠意です」とコメント。日本で受けてきた多くの恩恵をバトンとして受け継ぎ、次の世代にとって住みやすい日本をつくるため、日々全力で取り組んでいくとしている。
同社の強みは、原料生薬の調達から製品化までを一貫して手がけるサプライチェーンと、製品開発を自社で完結できる体制にある。今後はこの一貫体制と開発力を基盤に、治療領域に加えて未病・予防の領域にも事業を広げ、「健康創造総合企業」の実現をめざす。
出典:大峰堂薬品工業株式会社